大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和45年(オ)719号 判決 1973年12月14日

上告人

三喜商事株式会社

右代表者

尾崎喜太郎

右訴訟代理人

安藤昇

被上告人

株式会社大和通信社

右代表者

春原英喜

右訴訟代理人

宗宮信次

主文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人安藤昇の上告理由について。

民法一四五条の規定により消滅時効を援用しうる者は、権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されると解すべきであるところ(最高裁判所昭和三九年(オ)第五二三号、第五二四号同四二年一〇月二七日第二小法廷判決・民集二一巻八号二一一〇頁参照)、抵当権が設定され、かつその登記の存する不動産の譲渡を受けた第三者は、当該抵当権の被担保債権が消滅すれば抵当権の消滅を主張しうる関孫にあるから、抵当債権の消滅により直接利益を受ける者にあたると解するのが相当であり、これと見解を異にする大審院明治四二年(オ)第三七九号同四三年一月二五日判決・民録一六輯一巻二二頁の判例は変更すべきものである。

本件において原判決(その引用する第一審判決を含む。)の確定したところによれば、本件不動産はもと訴外郊外土地建物株式会社の所有であつたところ、同訴外会社は昭和三三年一一月一四日被上告人から金二〇〇万円を借り受け、その担保として同日本件不動産ほか二筆の土地につき抵当権を設定して、同年一二月一二日その登記を経由したが、上告人は右訴外会社から昭和三七年九月四日本件不動産の所有権を代物弁済により取得したというのである。してみると、上告人は右抵当債権の消滅により直接利益を受けるものであるから、民法一四五条により右抵当債権の消滅時効を援用しうる者であるというべきである。したがつて、上告人は右抵当債権の消滅時効を援用する権利を有しないと判断した原判決には、民法一四五条の解釈適用を誤つた違法があり、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄を免れず、更に審理を尽くすため本件を原裁判所に差し戻すべきである。

よつて、民訴法四〇七条一項に従い、全裁判官の一致で、主文のとおり判決する。

(吉田豊 岡原昌男 小川信雄 大塚喜一郎)

上告代理人安藤昇の上告記載の上告理由

原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背がある。

即ち、原審は、抵当不動産の第三取得者は時効を援用し得る当事者に該当しないと判示したが、これは時効に関する法令の解釈を誤つたものである。上告人には本件抵当債務の時効消滅を主張する直接の利益がある。 以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例